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6.過去とおっさん―9

「な、何をしているんだ。キット……」


「分からねぇ、分からねぇよっ。……でも、いつも親父にこうされてると、オレの不安な気持ちはどこかに吹き飛んじまうんだ」


 そう言って、キットはグルゥの頭を撫で続ける。

 確かに、少しだけ心が落ち着くようだと――グルゥはこの奇妙な状況に、安らぎさえ覚え始めていた。


「オレは物心ついた時から孤児みなしごで、あんな盗賊まがいのことをさせられてたから、家族の温もりってものを知らねぇ。だけど、もしも親父とオレが家族なら、親父が落ち込んでる時はこんな風にしてやりたいって……そんな風に、思うんだよ」


 キットの言葉を、グルゥは無言のまま、何度も頷いて肯定する。


 話す前に決めていたことだ。

 どんな反応がきたとしても、ありのままのキットの気持ちを受け止めると。


 だがさすがに、キットにいい子いい子されて慰められるとは思っていなかったと、グルゥは自嘲気味に笑みを浮かべた。


「もういい、お前の気持ちは十分に伝わった。そろそろ止めてくれないと……さすがに四十五歳には恥ずかしい」


「え!? な、なんでだよっ!? もうちょっと、こうしてたっていいじゃん……親父をナデナデ出来る機会なんてそうそうないし」


「ん? 今なんか言ったか?」


「い、いやなんでも……ってばか、どこ触ってんだ!?」


「散々、人を子供扱いしてくれた仕返しだ。……ギブアップするまでこちょばしてやる」


 年甲斐もなくはしゃぐグルゥと、年相応に暴れるキット。

 涙を流しながら笑い転げるキットを見て、グルゥは過去にも娘とこういう遊びをしたことがあったと、不意に思い返していた。


 それは復讐に囚われ、長い間忘れていた、一番大切だったはずの家族の記憶だった。

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