57.赤き炎とおっさん―4
「はいっ、ざぱーんっ!」
背中の泡を一気に流してもらい、グルゥは大きく息をつく。
「ありがとう、ミノン。今度は、ミノンの背中を流してあげようか」
「いやいや、それには及ばないって。ボクは今までグルゥさんに迷惑をかけた分、何かお返しがしたいって思ってるんだから」
「迷惑? そんなこと――」
「いや……薬を飲まされて自我を失ったとはいえ、ウルヴァーサやアキトの言いなりになっていたのは、ボクの責任だよ。本当に、申し訳ないと思ってるんだ」
しゅんとして肩を落としたミノンを見て、グルゥは複雑な気持ちになった。
それはミノンの責任じゃないと言えればいいが――自分も、破壊の衝動に負けてサグレスの街を破壊し尽くした過去がある。
安易にミノンの擁護をするのは、自分の罪を軽視することではないかと、そう思うと、ミノンの気持ちも痛いほど分かるし、あまり軽率な言葉は言わない方が良いように思えた。
「そうか……じゃあ、キットも待ってるし、少しだけ湯船に使ったら部屋に戻ろう」
「あ、ちょっと待って。グルゥさん、これをどう思う?」
そう言って、腰のタオルを取って、素っ裸の状態でグルゥの前に立ち塞がるミノン。
「いや……どう思うって、ナニが?」
「うん、だからナニの話。あ、確かこれはち○ちんって言うんだっけ」
「いきなり何を言ってるんだ!?」
唐突に自分の股間を見せびらかしてきたミノンに、グルゥは全力でツッコんでしまう。
あんまり大きな声だったので、露天風呂にいた他の客の注目を一斉に浴びてしまった。




