57.赤き炎とおっさん―3
――そんなやり取りを、数日前にしていたので。
「ごしごし、ごしごしっ」
一生懸命に背中を流してくれるミノン。
それはそれで嬉しいのだが、こんなことをしていていいのかと、そんな思いがグルゥの中にふつふつと湧いていた。
「どう? グルゥさん? 良い気持ち?」
「あ、ああ……気持ち良いよ、ありがとう。ただ、いつまでも風呂で休んでいる場合か?」
「何言ってるのさ、休めるときに休んでおかないと! 現状、ボクらに出来ることは英気を養うことだけだからねっ」
ミノンが色々と喋れるようになったのはいいが、言い包められてないかと、時々不安になるグルゥだった。
ケントラムにて、破れた世界の中に吸い込まれていった三人。
行き着いた先は、名前も聞いたことがないような『アガスフィア』の片田舎の町だった。
困惑するグルゥを尻目に、キットとミノンの二人は、露天風呂があるという町の名物らしい宿に興味津々である。
行く先もないし、日も落ちかけていたので、とりあえずその宿に泊まることにグルゥも了承したのだが。
(キットの怪我も完治していないし……無理は出来ないか)
ちなみにキットも風呂に入りたがっていたが、傷も塞がっていないため、部屋で留守番をさせている。
そう考えると、やはり二人だけで露天風呂に来ていることに罪悪感を覚え、早く戻ってあげようと思うグルゥだった。




