6.過去とおっさん―7
動けなくなったグルゥを、少年は剣で滅多刺しにした。
それも、急所となるような場所は避けて、生かさず殺さず、痛みだけを与えることを目的とするようなやり方だ。
「がああああああああああああああああああああああああああああっ!!」
全身から噴水のように血が流れ出していた。
「ギャハハハハハッ!! マジかよおっさん、まだ動けんのかよ!? おもしれ、おもしれッ!! いつになったらくたばンだァ!?」
気が狂いそうになる痛みの中、グルゥはついに抵抗する意思を失う。
「お……? 死んだ? なぁ死んだのか? これでオレも、魔王を退治した勇者ってヤツになんのかよ? うわ、やべー、カッケェなオレ」
動かなくなったグルゥに対し、少年はその反応を確かめるように執拗に剣先で突き続けた。
グルゥはされるがまま、ただその場で事が終わるのを待つ。
「じゃー、その首、頂いちゃおっかなー」
少年はわざとらしく大きな声で言った。
あえて聞かせることで、グルゥの反応を窺っているのだろう。
それでも絶望の渦中にいるグルゥには、指一本動かす気力すら残っていなかった。
このまま少年に弄ばれ続けるくらいなら、いっそ死んだ方がマシだと、本気でそう思っていたが――
「パパ……? ねぇ、何の音なの……?」
今にも消え入りそうな、不安に満ちたか細い声。
その声を聞いた瞬間、グルゥの意識は覚醒し、瞬時に上半身を起こした。
「来ちゃダメだ、ノニムッ!!」
隠れていろと言ったはずなのに――
重い扉を押し開け、覚束ない足取りで玉座の間に入ってきた幼い少女。
その姿を見て、少年はチロリと舌なめずりをするのだった。




