表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
557/984

XXX新たなる災禍XXX

 雷雲の中、礫のような雨が激しく窓を叩く。

 薄暗い玉座の間には、二人の男の声が響いていた。


「随分と派手にやったものだな。あれでは必要以上に警戒されてしまうのではないか?」


 男は手元のチェスの駒を一歩進めながら、そう言った。

 コツ、コツとテンポ良く駒が盤面を打つ音が響く。


「祝砲みたいなものだよ。大事を成すには、それ相応のスケイルが必要なのさ」


「だがしかし――君のお気に入りの勇者は、死んでしまったようじゃないか?」


「フ、その程度は想定の範囲内さ。ここからがスタートだ、と言ってもいい。それにお気に入りと言えば……君は随分と“翡翠”が大切と見える」


 強打を最後に、駒を進める音が止まった。


「どういう意味だ」


「そのままの意味だがね。おかげで、“瑠璃”を落とすのには大分苦労してしまったよ」


 コツン、という音を最後に、しばし静寂の時が流れる。

 雨の激しさが、煮えたぎるような心の内を表しているようだった。


「あまり調子に乗るなよ。お前には、“器”を逃がした負い目もあるのだぞ」


「その“器”も、どうやら力を吐き出してしまったようだがな。であれば、もう一度“器”を作り出せばいいだけのこと」


 駒が砕けそうなほどの荒々しい一打が、玉座の間に鳴り響いた。


「チェックメイトだ。話し合いはもういいかな? 早速、“器”の作成に取り掛かりたいのでね」


「貴様、我に対しそのような態度――」


 稲光と共に、玉座の間の中が照らされる。

 勝利を手にしすっと立ち上がった男は――フードを深く被り顔こそ見えなかったものの、三メートルを超すような大男だった。


「君こそ、年長者を敬い給えよ。私は君より、千歳近くは年上のはずだがね」


 玉座の間を去る男。

 雷鳴と共に、盤面をひっくり返すような荒々しい音が響いた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ