#―1
その、瞬間だ。
まさに一分一秒違わぬ、その瞬間である。
「――あっ」
ハッと目を覚ますマリモ。
むせ返るような血の臭いの中、全裸でベッドに横たわっていたマリモは、何があったのかすぐには思い出せなかった。
ただ、ずいぶんと長い間眠っていたような気がする。
体がだるい。
指先の動かし方も忘れてしまったようだ。
「あ……ああ……っ!」
酷く荒らされた状態の小屋を見て、マリモはだんだんと意識を失う直前の出来事を思い出してきた。
馬乗りになって、首を絞めてきたアキト。
アキトは、確かこう言っていたはずだ。
『チートスペル“眠り姫”。今からお前は仮死状態になる。……良い夢見ろよ、マリモ先輩』
『な…………え…………っ!!』
『解除の条件は二つしかねぇ。……俺のキスか、俺の死だ』
アキトはいったい、何をしようとしているのか。
その本心が分からず、マリモは困惑していた。
『いいか、俺は必ず、グルゥを倒してマリモ先輩を起こしに帰ってくる。ファーストキスだ。へへ、童貞ってことがバレちまって格好悪いかな。もし、マリモ先輩が目を覚ました時、俺が側にいなかったら、その時は――』




