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6.過去とおっさん―5
麗しい見た目とは裏腹に、ムジカは昔から喧嘩っぱやかった。
グルゥと幼馴染の彼女は、昔からいじめられっ子だったグルゥを何度も助けてやっていた。
グルゥは暴力は何も生まないと諭してきたが、今回の助太刀も、彼女にとっては昔からの延長線上のことだったのだろう。
「それ以上夫に触れるな、汚らわしい人間めッ!!」
躊躇することなく突き出されたムジカの槍は、少年の右肩を抉っていた。
「……ってぇ」
肉が裂け、白い骨が見えるところまで到達した、槍による深い一撃。
夥しい量の血が流れ出したが、何故か少年には、痛がる様子こそあれど慌てる様子はない。
「いってぇなクソ、雑魚のクセによォ!!」
そして、少年が激昂した次の瞬間。
少年の持つ剣から伸びた光の刃が、ムジカの胸を深々と貫いていたのだ。
「…………あ、え………………?」
心臓を一突き。
信じられない、とムジカの表情が強張っていた。
「チートスペル“光の剣”。射程距離無限の光の刃だ。こんなところで使うハメになるとは思わなかったぜ」
少年は光の刃を無造作に引っ込めた。
ムジカの胸に空いた穴から、噴水のように鮮血が噴き出し始める。
その光景を、グルゥはまるでスローモーションのような感覚で見ていた。




