54.続・ジ・エンドとおっさん―8
――薄暗いひっそりとした裏路地を、彼女は一人で歩いていた。
足取りは重く、ふらついている。
腹部に添えた右手の指の隙間からは、ポタポタと絶えず血が滴り落ちていた。
不意にバランスを崩した彼女は、その場にへたり込むように崩れ落ちる。
無造作に壁にもたれかかると、遠い目で暗夜の空を見上げた。
「親…………父…………」
漏れ出た言葉と共に、口の端から血が滴り落ちる。
ツァイセに刺された傷は、幼いキットにとって致命傷となり得るほどのダメージだった。
「ごめん……な…………。…………約束、果たせ…………」
ポタ、ポタと冷たい雫が降ってきて、キットの頬を静かに濡らしていく。
分厚い黒い雲が月を隠し、雨は次第にその強さを増していった。
冷たさがキットの体力を奪い、瞼は重たそうにぷるぷると震え、今にも閉じそうになっている。
ふと、帽子の上に暖かな温もりを感じ、キットはうっすらと目を開けた。
「親…………父…………?」
大きな手が頭を包み込む。
ここにいるはずのないグルゥ。
その姿が目の前に現れ、凍えそうになっていたキットの心に暖かな光が差し込んでいく。
「ありがとう……オレも……一緒に……」
その温もりに飛び込むように、キットの意識はそこで途絶えてしまった。




