54.続・ジ・エンドとおっさん―5
“時限爆弾”は、教会の天井に仕掛けられていたのだ。
「いや――」
天を仰いだシスターの目が、絶望に見開かれる。
空からは、無数の木材の破片が落下してきていた。
「ミノンに持たせていた球体はフェイクだよ。俺は始めから、天井を砕いてコイツらを潰そうとしてたんだ」
うまくいったと、あっけらかんとした口調で話すアキト。
グルゥの体は既に動いていた。
「させるかッ!!」
シスターと子供達に覆い被さり、身を挺して瓦礫から彼らを守るグルゥ。
鋼のような硬度を持つ皮膚が瓦礫を弾き飛ばし、腕一本で済んで良かったと、多くの命を救えたことにひとまず安堵する。
だが、その時だ。
「がァッ!?」
グルゥの鋼鉄の体を持ってしても防ぎ切れなかったものが一つ。
それは深々とグルゥの背中を貫いて、心臓に達するほどの致命傷を与えていた。
「あ……が…………」
魔獣化したグルゥの胸から、夥しい量の血が溢れ出す。
口からも血の塊を吐き出して、その場は一瞬にして血の海となり、命を賭して守った者たちを赤く濡らしていった。
「っていうのもフェイクでさァ……!! そうそう、コレ、コレなんだよ……ッ!! やっぱラスボスは、相応の演出でぶっ殺してやりたいじゃんッ!?」
計画通りだと、アキトは爛々と目を輝かせて無邪気に喜ぶ。
グルゥを襲い、その強靭な肉体を貫いたもの。
それは教会に掲げられていた十字架であり、歪に尖った先端は、不幸にもグルゥの心臓を貫いていたのだった。




