54.続・ジ・エンドとおっさん―4
荒い呼吸をしながら、アキトはグルゥが破壊した教会の入り口から中へ入ってくる。
その右手からは、グルゥを捕縛する鎖が放たれていた。
「っへへ、ギリギリセーフ……。悲劇のショー、特等席で見てくれよッ!?」
ミノンまでの距離は僅か二メートルほどだ。
その二メートルが、今はどんな場所よりも遠く感じられた。
「ああ、神様……っ!!」
全てを悟ったシスターは、子供達に覆い被さるように自らの身を投げ打った。
その光景が、グルゥの脳裏に自分を守ろうとしたノニムの姿をフラッシュバックさせる。
「十秒前。九、八、七――」
迷っている暇はない――グルゥは全ての感情を爆発させ、思うが侭の姿に変貌を遂げる。
だが、魔獣化しても左腕に絡みついた鎖は取れない。
「チートスペル“活力吸収”ッ!!」
魔獣化した力を、アキトが片っ端から吸収しているからだ。
それならばと、凶悪なグルゥの牙が剥き出しになった。
迸る鮮血。
まるで噴水のように溢れ出した血のシャワーが、床に伏せている子供達に降り注いだ。
牛のように突き出たグルゥの口には、自身の左腕が咥えられていた。
「千切れてもくっつくことは実証済みだ……ッ!!」
それを乱暴に床に吐き捨て、魔獣化したグルゥはミノンから黒い球体を引ったくる。
もはや外に投げ捨てる余裕もない。
グルゥは球体を抱え込むと、その衝撃を外に逃さないよう、ぎゅっと体を縮めこんだ。
「…………ん?」
十二時を告げる鐘の音が鳴る。
グルゥが抱え込んだ球体には何の変化もなく――その衝撃と爆音は、頭上から降り注いできた。
「ジ・エーンド」




