53.ジ・エンドとおっさん―4
「…………っく……!?」
飛んできた木の破片が額を傷つけ、流れる血が目に入り視界がぼやけた。
大した傷ではないが出血が多い。
砂煙が巻き起こって、視界は更に悪くなっている。
「大丈夫か、キット」
「親父こそ!! また、無茶なことして……!」
とっさにキットを抱き寄せ盾となったグルゥの背中には、無数の木の破片が突き刺さっていた。
元々鋼のような筋肉を持つグルゥなので、致命傷こそなかったものの、相当な勢いでの爆発が起こったことが分かる。
「またか! あのテロリスト集団め……!」
「おーい、救護班こっちだ! こっちでも怪我人が出たぞ!」
周囲が騒然としている。
砂埃が薄れてきて、グルゥはようやく何があったのかを把握した。
「……なんてことだ……っ!」
屋台の一つが粉々に壊れていて、その破片がグルゥを傷つけたようである。
また、グルゥだけでなく、周囲にいた通行人にも多数の怪我人が出ていた。
「おい、あんた大丈夫か!? ケントラムに着いたばかりだろう、悪いことは言わないから今日は中に入らない方がいい!」
救急箱のようなものを持ったアスタロスの男が、蹄をガチャガチャといわせながらグルゥの前にしゃがみ込む。
「朝っぱらからケントラム・アリーナが襲撃されたのに加え、夕方からは無差別に爆発が起こってるんだ! こんなこと、まともな魔人のやることじゃねぇよ!」
「……ま、待て待て。襲撃というのは、いったい……?」
そこでグルゥは、イルスウォードによる会談の襲撃、そしてデルガドスを含めた多くの王族が怪我をしたことを知った。




