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53.ジ・エンドとおっさん―1

 ケントラムの北部には小さな教会がある。

 元々、各血統のルーツである魔神を信仰するイルスフィアでは、教会という存在そのものが珍しいものだった。


 だが、様々な血統の魔人が行き交うケントラムでは、そのような場所の存在も少なからず必要なのである。


「はい、みなさん一列にならんでください。今日のお昼ご飯はパンとシチューですよ」


 そう言って、子供たちが持つ食器に一杯ずつシチューを入れているのは、白い角の生えたシスターである。

 元気良く一列に並んでいる子供たちも、よくよく見れば白い翼が生えていたり、尖った耳の先が二つに割れていたりと、一見しただけではどの魔人なのか判別がつかない身体的特徴がある。


 そう、ここは行き場を失くした魔人達――“形質反転”などの理由で国を追われた魔人達が集う、救いの場であったのだ。


「コラ、お前ら順番は守れって! そんなにがっつくな、シスターの言うことを守れよ!」


 忙しなく動く子供達をまとめようとするのは、子供の中でも少し年齢層が高めの、“犬耳”の少年だった。

 少年は子供達にパンとシチューが行き渡ったのを見てから、ようやく自分の分を貰おうとする。


「いつもごめんなさいね、面倒を見るお手伝いをしてもらって」


「いえ、いいんです。シスターには感謝してますし、もうじき、俺もここを出て……他の先輩達みたいに、目一杯仕事をして、少しでもお金を返せるようにしますから。だから、今のうちにやれることは何でもやっておきたいんです」


 少年の言葉に、シスターは少し目元を潤ませて、だけど笑顔は崩さずに、鍋の底のシチューをよそってやった。


「ごめんなさい。ちょっと量が少なくなっちゃったかも」


「仕方ありませんよ。チビ共は食べるのが仕事ですから」


 和やかな教会の昼下がり――そんないつも通りの平和な光景が崩れたのは、一人の少年が入って来てからだった。

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