52.続々・惨劇とおっさん―3
「言うなればほら、私はあなたの主の使いみたいなものですよ」
「主……? はぁ!? お前、まさかゲームマスターの――」
「ええ。“ユグドラシズ”様の命で動いているといえば、私の指示が絶対ということは分かりますよね?」
次の瞬間、アキトは大きく飛び上がったかと思うと、
「チートスペル“命を刈り取る鎌”ッ!!」
大鎌を繰り出して、リーヴスに斬りかかった。
リーヴスは右腕で手刀を振るうと、そこから発せられた水の刃で大鎌の一撃を受け止める。
「そいつはどうも……殺したくなるよッ……!!」
「私に手を出すということは、勇者戦争での勝利を放棄するということ。理解して頂けましたか?」
リーヴスの冷笑が、アキトの眼前で炸裂した。
アキトはまだ言い足りなそうだったが、チッと舌打ちをすると、大鎌を引っ込めてリーヴスへの攻撃を止めた。
「待って……どういうことですか、リーヴス!? どうしてあなたは、勇者戦争について知っているのですか!?」
「やれやれ、これだから世間知らずのお姫様は困りますねぇ。こんなこと、この場にいる者ならばみんな知ってることだと思いますが」
混乱するサリエラに、リーヴスはゆっくりと、はっきりした口調で言い切ってみせた。
「今回の勇者戦争は、我らジルヴァニア王国が主体となって、開催しているんですよ? 残念ながら、あなたが勝手に家出をして、勝手に情報を得なかっただけです。文句を言うのは止めてくださいね」
愕然とするサリエラ。
その真実は、サリエラが今まで信じていたもの、それを崩すには十分すぎるものだった。




