52.続々・惨劇とおっさん―2
「無闇に騒ぎを起こすのは止めてください、異世界勇者さん」
が、ホールの扉が大きく開かれて、そこに更に一組の男女が現れる。
アキトに話しかけながら入ってきたのは、眼鏡の男――リーヴスだ。
その後ろからは、まるで自分が場違いであると思っているかのように、緊張した面持ちのサリエラが付いて来ている。
「サ、サリエラぁ!」
一日も経っていないのに、久しぶりに会ったような気がして、ミルププは大きな声でその名前を呼んだ。
当のサリエラは、少し雰囲気の変わったミルププを見て面食らった様子である。
「こ、これは何があったんですか? 私は、一応、計画通り助っ人を連れて来たのですけど」
炎が舞うホールの中には、血まみれになって倒れているデルガドスと、アキトに対峙している『サタン』の男。
状況的に、イルスウォードの襲撃があったというのは何となく把握できたが、何故ここにアキトがいるのかが理解出来なかった。
「って、いうかリーヴス」
「ん? こんな時に何ですか、姫」
「あなた今、異世界勇者って言いませんでした!? どうしてアキトのことを知っているんですかっ!?」
サリエラにツッコまれて、リーヴスはしらばっくれるかのように眼鏡を持ち上げる。
「なんだなんだ? お前らは、このガキの仲間なのかよ?」
「いや、俺としてもそんな認識は無いけど? ……でも、俺のことを知ってるっていうのは気になるねぇ」
ヴァングリフとアキト、両者の視線が同時にリーヴスに注がれる。
やれやれ、とリーヴスは肩をすくめてみせた。




