51.続・惨劇とおっさん―9
信じられなかった。
自分を捨てたと思っていた父親が目の前に現れて、しかも自分の命まで救ってくれた。
「お父さん、私だよっ、ミルププだよ――」
「おうおう、それは分かってるっつーの。ま、感動の再会の時間は……事を終わらせてからだな」
ミルププはそれまでの自分すらも忘れて、大きな声でヴァングリフに呼びかけた。
ヴァングリフは苦笑しつつも、その目は赤くなっていて、何か強い感情を押し込めているのが見て取れる。
そうしてヴァングリフがデルガドスに剣を向けたのを見て――ミルププは一気に現実に引き戻された。
「え、え、何を――」
「愚息めが……。国の名誉に傷をつけただけでなく、このような大罪を犯すまでに堕ちていたかッッッ!!」
「親父……いや、暴君デルガドスよ。あんたの考えはもう古いんだ。そして、それに過剰なまでに固執するあまり、今までどれだけの人が傷ついてきたか」
父と祖父が戦おうとしている。
その状況にミルププは言葉を失い――どうすることも出来なかった。
「大丈夫です、ミルププ様……っ! ヴァングリフ様が、私達を、ヌエツトのみんなを、正しい方向に導いてくれますからっ……!」
その動揺を察したのか、ミルププの耳元で囁くニフラ。
「あんたの時代は終わりだ、デルガドス」
ヴァングリフも二メートルを超える長身だが、変貌後のデルガドスはその二倍近くの身長があった。
大剣を軽々と振りかざし、デルガドスに向かっていくヴァングリフ。
炎の中、二つの巨体が交錯し、衝撃で地面が揺れた。




