表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
50/984

6.過去とおっさん―1

 天高く振り上げた刃――その先端がキラリと日光を反射すると、グルゥは容赦なく鍬を振り下ろした。


 抉れる大地。

 積み上がる土。


 立派なうねが出来たことに満足し、グルゥは首から提げたタオルで汗を拭いた。


「おや、朝から精が出ますなぁ、領主様」


「『イルスフィア』の赤茶けた土には、含まれている栄養が少ないのです。きちんと手入れをしてやらないと、立派な作物は出来ないのですよ」


 散歩中の老人は、数少ない領民の一人だった。


 そう、ここはグルゥが手に入れた領地。

 辺境の地を開墾し、どうにか作物や綺麗な水が手に入るようにし、やっと思いで作り上げたグルゥの国なのだ。


 領民はみな穏やかな性格で、同じく優しい心を持つグルゥは、大きな富や豊かな資源こそ持たないものの、民から慕われる良き領主となっていた。


「どわあああっ!?」


 が、突然のグルゥの絶叫に老人はすっ転びそうになってしまう。

 グルゥの首筋には、冷たいものが当てられていた。


「お、驚かせるなよ、ムジカ……」


「うふふ、本当にでかい図体の割に、気の小さな人ね。はい、差し入れよ」


 差し出された氷入りの茶を、グルゥはぷんすかと怒りながら一息で飲み干してしまった。


 彼女の名前はムジカ。

 麗しい黒髪と、美しい螺旋状の黒角が印象的な、グルゥの妻である。


 こんな穏やかな日々が、いつまでも、いつまでも続くと信じていた。


 しかしそんなグルゥの思いは――ある日、一瞬で崩れ去ることになる。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ