51.続・惨劇とおっさん―4
「き、貴様……裏切るのか」
その時、円卓に突っ伏していた男が、苦しげに言葉を吐き出した。
その姿を見てミルププは驚愕する。
まさか、あの傲慢で不遜、だけど誰よりも強いと思っていたデスガドスが、既にやられているとは。
「あらあら、デルガドス様。普通の魔人の致死量の三倍近くの毒を入れたのに、まだ喋れるんですねぇ」
「この、女狐めが……国に戻ったら、貴様の一族全て、八つ裂きにして殺してくれる」
デルガドスの足元には割れたコーヒーカップが落ちていた。
デスガドスは侍女として常にニフラを側に置き、信用していたはずだ。
そのため、出された飲み物も躊躇することなく口にしてしまったのだろう。
ましてや各国の王が集まるこの状況。
同じ国の魔人であれば、裏切られるはずがないと無意識に思うはずだ。
「一族……? ……やはり、あなたは忘れているのですね。私の家族は、既にあなたに」
ニフラの甘ったるい声色が急に低くなり、ミルププは背筋がぞくっと寒くなるのを感じる。
「……まあ、今この話をするのは止めておきましょう。さぁ皆様、早く各国の王を捕縛してください――」
そう、ニフラが指示を出した時だった。
「いや、やはり……この場で胴体を真っ二つにするべきか……!!」
口から血を流し、自慢の白髭を赤く染めたデルガドス。
危険な毒を摂取しているはずだが――その巨体が、ゆっくりと持ち上がって立ち上がった。




