51.続・惨劇とおっさん―3
巨大な円卓を囲むようにして、各国の王達がその上に突っ伏していた。
床に広がる真っ赤な血溜まり。
むせ返るような鉄の臭いがする。
「ぇ?」
思考が停止する。
石像のように動かなくなったミルププの首筋に、冷たいものが当てられた。
「はい、良い子ですねぇミルププ様。……このまま動かないでくださいね?」
ニフラの生暖かい声が、頭上から落ちて背筋を這うように下がっていく。
身震いがした。
まったく状況が理解できない。
それなのに、圧倒的な恐怖が鉛のような感触でミルププを押し潰そうとしている。
「な、なん、で……」
「もぉ、ミルププ様ってば。見て分かるでしょう? ……会場はもう、“イルスウォード”によって制圧されてるの」
武装した、血統の違う魔人達が、王やその護衛を組み伏せている。
どうやら既に、事は始まって、終わった後らしい。
ホールは、イルスウォードによって襲撃を受けていたのだ。
しかし、あれだけ厳重な護衛が、何故こうも簡単に突破されているのか?
「…………ぁ…………!」
恐る恐るニフラを見上げると、その目は慈しむような愛情に満ちて、ミルププを見つめていた。
「大丈夫……ミルププ様の安全は保証しますよ?」
つまり、イルスウォードは――既に各国の王に近い位置にまで潜り込んでいて、王が一同に会するこの瞬間を、待ち侘びていたのだろう。




