51.続・惨劇とおっさん―2
「ほ、ほらこんなに! 可愛らしいですぅ!!」
目をキラキラさせ、恍惚とした表情でミルププを見つめるニフラ。
メイド服に着替えさせられたミルププは、顔を真っ赤にして三角座りをした。
「……ゃだ……もぅしぬ……」
「なんでそういうこと言うんですかー。ミルププ様は可愛いって、みんなが思ってることなんですよ? ミルププ様には、お茶菓子の配膳とか、簡単なお仕事を任せますから。さぁ、張り切って参りましょー!」
嫌だと言っているのに、完全に自分の世界に入り込んでしまったニフラは人の話を聞いている様子がない。
ミルププは自分の身に降りかかっている事態を全く飲み込めないまま、会談が行われているメインのホールへと連れて行かれた。
(ぉじ様たちが頑張っているのに、なんでこんなことをしなくちゃいけないの)
デルガドスの勝手な命令で、社会体験のようなことをさせられ、それどころじゃないのに、とミルププはデルガドスへの恨みを溜める。
(ああやだ、知らない人と会いたくない、苦手なことをしたくない、動きたくない話したくない引きこもりたいもうだめ)
グルゥがいないこの状況で、ミルププの心はすっかり引きこもり時代に戻ってしまっていた。
沸騰したタコのように真っ赤になったミルププは、ふらふらになりながらもニフラの後をついていく。
「さぁ、背筋を伸ばして。笑顔でお客様への対応をお願いしますね」
(だから、それむりーーーーーーーーーーーーー!!)
石化でもしたのかと思うほどにカチコチになったミルププは、右手と右足を同時に出しながらホールへと足を踏み入れた。




