5.異世界勇者とおっさん―10
確かに今まで、グルゥは自分の過去について、キットに話すには重過ぎると思っていた。
だがそれは、遠回しにキットを遠ざけることでもあったのだ。
「……分かったよ」
グルゥはついに決心した。
自分の過去をキットに話す。
そして、自分の目的が復讐であることもキットに打ち明ける。
「お前が、そこまで私のことを思ってくれているのなら、私も自身について話そう」
全てを話し終えた時、キットはどんな顔をしているだろうか?
軽蔑した目で自分を見下すか、あるいは、同じように復讐に心を燃やすだろうか。
どんな反応であったとしても――グルゥは二つのことを心に決めていた。
一つは、キットのありのままの気持ちを受け止めること。
そしてもう一つは、キットを復讐に巻き込まないということだ。
これは復讐の協力者を作るためではない。
あくまでも、親子として、より互いの理解を深めるために。
そのために必要なことなのだと、グルゥは自分を見失わないよう、強く心に誓った。
「これは私が、『イルスフィア』の小さな公国で、その地の領主――魔王になっていた頃の話だ」
裸の二人。
全てを曝け出すための話が、始まった。




