表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
484/984

50.惨劇とおっさん―1

「いやぁ、遅くなって申し訳ない。朝は苦手なもので。……それに、まさかあなたの方から私にコンタクトを取ってくるとは、思わなかったのでね」


 そこは、ケントラムにある薄暗い酒場だった。

 宿屋に併設されている酒場で、さすがに早朝ということもあり客は少なかったが、昨晩から飲んだくれているような魔人が、テーブルや床で何人か寝転がっている。


「こんなところに呼び出すなんて……デリカシーが無い男ですね」


「それは大変失礼しました。私もあまり表立って動くわけにはいかないのでね」


 酒場の片隅のテーブルで、人目から逃れるようにコソコソと話しているのは、サリエラと水色の髪の男だ。

 二十代前半に見えるその男は、穏やかな笑みを浮かべてサリエラに相対していた。


 だがサリエラは知っている。

 一見優男に見えるその男の目の奥は、一切笑っていないということを。


(顔は怖いけど根は優しい……そんなお父様とは、真逆の男ですね)


 サリエラは警戒心を隠しながら、テーブルの上のコップの水に手を伸ばす。

 男は小さな眼鏡をくいっと持ち上げながら、そんなサリエラの一挙手一投足を舐めるように見ていた。


「……そんなにジロジロ見ないでください。正直に言って、不快ですよ」


「おや? そう感じられたなら謝罪しますよ。いえね、先程から随分と喉が渇いているのだなと思って……水面が震えていますよ、サリーメイア姫」


 男はそう言って、わざとらしく小首を傾げてみせる。

 肩の辺りまで伸びている一本に結んだ髪が、ふわりと左右に揺れた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ