49.悪とおっさん―8
『気付いちまったんだよなァ、俺。勇者戦争で勝ち抜くならさ、いちいちガキを運ぶよりも、自分がさっさとレベルアップした方がはえーってことに。ってなわけで、他の勇者サマも美味しく頂いたし、魔人共も皆殺しけってーい☆ どうせお前らなんて雑魚モンスなんだよ。勇者の餌なんだよ。てなわけで、次の狩場はどこでしょう? ヒントは、人間が簡単に入れて、たくさん魔人が集まるとこでーす。最終ラウンドといこうぜ、おっさん』
グシャリ、と手の中で便箋を握り潰したグルゥ。
眩暈が起きて、しばらくその場から動けなくなる。
アキトは――自らの力をより強くするために、他の異世界勇者までも手に掛けることを選んだのだ。
なんて利己的な性格なのだと、グルゥはある種の絶望を感じていた。
そして何よりも最悪だったのが、次の惨劇の場所に、恐らくはケントラムを指定していることである。
「これがブラフで、私を別の場所に誘導しようとしているということは……」
しばらくグルゥは考えたが、その可能性は限りなく低いだろうと思った。
プライドの高いアキトの性格だ。
自分に対しての復讐心は相当高いだろうし、実際、レベルアップのためにケントラムで無差別殺人を行うというのは十分考えられる話である。
何より、人が集まるケントラムのような場所は、グルゥにとっては最も戦い辛い場所なのだ。
サグレスタワーの二の舞にはならないだろうと、狡猾なアキトはそこまで計算しているのかもしれないと考えた。
「……そうだ、サリエラと、ミルププは――」
二人共、現在はケントラムに滞在しているはずである。
何かが起きていたら大変だと、グルゥは慌ててイモムシに向かって話しかけたが――
その通信が、繋がることはなかった。




