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49.悪とおっさん―7

「信じ、られん……。どうしてこんな、酷いことを」


 グルゥの目からは、少なくともマリモはアキトの味方でいると思っていた。

 アキトほど捻じ曲がった性格ではないが、真面目であるが故に傷つきやすく、常に判断が揺れ動いているような、そんな少女だった。


「君達の間に、何があったんだ」


 尊厳すらも奪われるような形で殺されたマリモを哀れに思い、グルゥは枕元まで近付くと、そっと開かれたままの目を閉じてやる。

 だが、それでもマリモの苦悶の表情は変わることがなく、それを見ているだけで、グルゥは自分の目からも涙が零れそうになるのを感じる。


 まだ若い少年少女が、何故このように殺し合わなくてはならないのか。


 やはり、アキトは歪んでいる。

 これ以上野放しにしておくわけにはいかないと、グルゥは心に固く誓う。


「この世界に悪が存在するのなら、彼のような人間なのかもしれないな」


 アキトの心に巣食うものは、いったい何なのか。

 底知れない邪悪のようなものを感じ、グルゥは背筋が寒くなるのを感じた。


 それからグルゥは、せめてマリモに掛けるものはないかと納屋の中に目を向けた。

 するとボロ机の上に、一枚の便箋のようなものが置いてあるのを見つける。


「これは――」


 そこには殴り書きの文章が書かれていた。


『ヨォー、おっさん。ゲンロクに言われてここまで来たんだろ? あの裏切り者ももう、物言わぬ肉塊に変わってるぜ』


 文書の途中だが、便箋を握るグルゥの手はカタカタと震え始めていた。

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