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49.悪とおっさん―5

「――ワシがいけなかったんじゃ。若者が困っているからと、ワシが、納屋の一部を貸さなければ」


 馬車を降り、グルゥとキットが案内を受けながら道を歩く最中。

 老人の懺悔の話が、始まっていた。


「初めて見た時、彼らはボロボロで、特に少年の一人は酷い火傷をしておった。行くあても無い彼らを見かねて、ワシは少しの間ならと、村に居ることを許してしまったのじゃ」


 老人の話から察するに、助けた三人組の異世界勇者というのは、アキトとマリモとユズのことで間違いなさそうだった。


「火傷をした少年の目つきからは、少し嫌な感じもしたが……年長の少女はしっかりした子で、水汲みや動物の狩りなど、村の手伝いもしてくれていたのじゃ。……だから、ああ、まさかこんなことになるとは思わんかった。まさか、あの子が――」


「マリ……いや、年長の少女が襲い掛かってきたのか? それで、村が大変なことに?」


「それは……とてもじゃないが、思い出しとうない。どうか、村の状態を見て……まだ怪我人も多くいるのじゃ、助けを呼んでもらえると、助かるのじゃが」


 道を歩きながら、グルゥは徐々に異様な臭いが鼻につくのを感じ始めていた。

 自分でこうなのだから、鋭敏な感覚を持つキットはどうかとその表情を見ると、明らかに青ざめて気分が悪そうにしている。


「お、親父、これって……」


「ああ。……血の臭いだろうな」


 状況は、グルゥが想像し得る中で最悪の展開を辿っていた。


「突如、狂ったように暴れだした異世界勇者によって、村人の半分近くが殺されてしもうた。納屋を貸した恩義のつもりなのか、ワシだけが無傷で生かされたが……どうすればいいいと言うのじゃ。生き残った者も、ワシが異世界勇者の仲間だったのだと決め付けておる」


 老人の悲痛な訴えに、グルゥの胸は締め付けられるようだった。

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