49.悪とおっさん―3
ミルププは目を白黒させながら、ニフラをキッと睨みつけた。
「なに? もぅ十二時近ぃのに、こんな薄暗ぃ廊下をダッシュして……」
「い、いえ、その……。……晩酌の酒が足りないから、急いで調達して来いと、王からの命令が」
「はぃ? こんな遅くまで飲んでるの? 明日は朝から会談なのに? ……ゃっぱ、ロクでもないゃつ」
怒り始めたミルププを見て、ニフラはあはは、と苦笑いをする。
「やっぱり、ミルププ様にはお伝えしない方が良かったかな……。でも、毎晩のことですから、私には慣れっこなんです」
「……一言、言っておくから、ぃぃょ。このァル中って……」
「そ、そんなことミルププ様から言われたら、デルガドス様の酒浸りが更に深刻なものになってしまいます! どうか抑えてくださいっ!」
必死の形相で止めようとするニフラに、ミルププはフンと鼻白む思いだった。
「そんなんだから、ゎがままに拍車がかかるんだょ……」
ニフラの耳に入らないように呟くと、ミルププは大きくため息をついて立ち上がる。
いつまでヌエツトはデルガドスの一強体制を続けるのかと、その点も、ミルププにとっては不満の一つだった。
「まぁぃぃゃ。私はもぅ行くから」
あまりニフラと話し込んでいる時間も無いため、ミルププはその場を後にすることした。
デルガドスが使用している部屋はケントラム・アリーナでも奥の方にあり、当然そこに至るまでには多くの護衛がついている。
が、そもそもデルガドスに護衛が必要なのか、ミルププは甚だ疑問であった。
「入りますょ……」
もちろんミルププは顔パスであり、招かれるようにしてデルガドスの部屋まで赴く。
案の定、部屋の中にはツーンと鼻をつくような酒の匂いが充満しており、赤ら顔のデルガドスを見て、ミルププは思い切り顔をしかめるのだった。




