49.悪とおっさん―2
それから、両者の情報交換が行われた。
グルゥはまず、ウルヴァーサは囮で、別働の本隊が存在していたこと。
それは恐らく、他の血封門を狙っていることを伝えた。
反対に、ミルププは明日の朝から、四カ国の会談が開始されることを伝える。
そして、このことを至急デルガドスに伝える、とも。
『そうか、デルガドス王と合流することは出来たのか。助かったよミルププ、ありがとう。負担を掛けてすまないな』
グルゥに褒められて、ミルププはソファーの上でゴロゴロして悶絶した。
今、目の前にグルゥがいたら目一杯甘えられるのにと、切ない気持ちになる。
『ヘッ、敵にあっさり釣られるようなアホのせいで、こっちは大忙しだぜッ! じゃあ、今日はもう遅いし、王様に伝えるために通信を切るからなッ!』
イモムシとの精神的なリンクを切って、ミルププはソファーの上に倒れ込む。
いくら役目とはいえ、大嫌いな祖父と話すのは、ミルププにとっては非常に大きなストレスだった。
「でも……ゃらなきゃ……」
それがグルゥのためでもあるし、イルスフィア全体に関わることであると。
想像以上に進んでいた事態を重くみたミルププは、どうにか気合いを入れて控え室の外にでる。
すると、
「びゃっ!?」
扉を開け、廊下に出た瞬間に何かに激突し、ミルププは大きく吹っ飛んだ。
「ぁたた……」
「こ、これはミルププ様! 申し訳ありません!」
ペコペコと平身低頭の姿勢で謝るのは、大柄な体格の『サタン』の女性――ニフラである。
デルガドスの世話をする従者として、彼女もケントラム・アリーナまでやって来ていたのだ。




