49.悪とおっさん―1
ケントラム平和祈念会議堂、通称“ケントラム・アリーナ”。
七つの血統、七つの大国の恒久の平和を願って建設された、イルスフィアの中でもトップクラスの大きさを持つ施設である。
ケントラムがイルスフィアの中央に位置する関係で、三ヶ国以上の会談ではケントラム・アリーナが使用されることが多く、今回の会談の場所にも抜擢されていた。
そして現在集まっているのは、『サタン』『マモン』『アスタロス』『ベリアル』の四つの血統の代表者である。
『ベリアル』に関しては、王の怪我を理由に大臣の者が来ていたが。
「やっと繋がったぁ!」
そのケントラム・アリーナの控え室で、ミルププはイモムシを介したグルゥとの通信を行っていた。
『オイオイ、今まで何してたんだよ! こっちは何度も連絡しようとしたのに、着拒か!? 俺様には愛想が尽きたってか!?』
という内容を、ミルププはペンで空中に魔式として書いて、向こうのイモムシに喋らせる。
反対に、イモムシが聞いたこと、見たことは直接ミルププにフィードバックされる。
それが“使い魔”とミルププの関係性である。
『すまない。イモムシが冬眠してしまって、起こすのに時間がかかったんだ』
久々に見たグルゥの姿に、ソファーに寝転がっていたミルププは嬉しくなってぎゅーっとクッションを抱き締めた。
『ケッ、そんな言い訳は聞いてないんだよタワケッ! こんだけ心配かけたんだ、ミノンは無事に助け出せたんだろーなッ!?』
もっとも、その感情をうまく伝える術を、ミルププは持ち合わせていないのだが。




