48.胎動とおっさん―10
「あ……そん、な……」
「オイオイ、本気にすんなって。利用価値があるからまだ俺が生かしてやってんだろ? そこら辺空気読めよ。チートスペル“魅惑香”」
妙な香りが立ち込めて、ツァイセの思考能力は徐々に奪われていった。
「今日からお前は俺の奴隷だ。俺も調子に乗って仲間を殺しすぎて、完全にオーバーワークの状態だからな。卑劣だとか思うなよ? これはお前らがこの子にやったことだ、人にやられて嫌なことは、他人にやっちゃいけないんだぞー?」
そう言ってから、アキトはツァイセの胸の膨らみを鷲掴みにした。
それからその先端に爪を立て、ジッとツァイセの目の奥を覗き込む。
甘い香りに包まれ、思考停止の状態になったツァイセはされるがままだった。
それを確認したところで、アキトはツァイセの胸から手を離す。
「よしよし……よーく、チートスペルが効いてるみたいだな。んじゃあ、しばらくそこで待ってろよ。俺はミノンと……この奥に進むからな」
アキトの手には、橙色の鍵があった。
死体の群れから探し出した、琥珀の血封門の奥に進むための鍵だ。
「もう一本は、ミノン、お前がやるんだよ。大丈夫だ、お前の力だったら……鍵の分析と複製くらい、時間をかければやれるだろう?」
ミノンはアキトに言われるがまま、渡された鍵と扉の魔法陣を元に、扉を開けるための鍵を分析し始めた。
「ま……しばらくは岩盤浴でも楽しむかな、待つのは嫌いなんだが。おい奴隷、お前、ご主人様の椅子になれよ」
アキトの命令で、全裸のツァイセは四つん這いになり、アキトはその上に腰掛けた。
「この奥に眠るモンを頂いたら……いったい、どんだけレベルアップ出来るかな」
その想像をするだけで、アキトの目は無邪気な子供のように爛々と輝く。
それはまさしく、RPGゲームの攻略を楽しむ少年の瞳だった。
第9章 氷の世界とおっさん ―完―




