48.胎動とおっさん―8
「貴様……ッ! 何が目的だ!! 何故、我々の計画を知っていた!!」
「んー、何故って言われてもな……勇者だから、としか」
そう言って、一歩距離を詰めるアキト。
ツァイセは後ろに目をやるが、この先は血封門の最深部で、巨大な扉で道が閉ざされている。
逃げることは出来ない。
ここで、自称勇者の殺人鬼を迎え撃つしかないのだ。
「君は逃げるんだ……いいね」
ツァイセは後ろに隠していたミノンに声をかける。
しかし、散々薬を飲まされてきたミノンに正常な思考能力は残っておらず、曖昧に頷くだけである。
「逃がすわけねーだろ……俺はそいつと、この奥のものを頂きに来たんだぜ」
小声で呟くアキト。
そう、全てはフォルを回収し、自身のレベルアップを計るため。
「さっさと気が付いてれば良かったんだよな……異世界勇者を殺せば相当なレベルアップになるって。習得した新スペル“命を刈り取る鎌”で生き物を殺せば、そのままフォルを吸収することも出来る。答えはこんな簡単なことだったんだ」
ぶつぶつと一人で呟きだしたアキトに、ツァイセは言い知れぬ恐怖を覚えていた。
その恐怖を振り払うようにヒビの入った“竜の牙”を今一度握り締める。
(ああ、ウルヴァーサ様、どうか私にこの悪を倒す力を下さい)
「……あ、そういやさっき、俺の目的も聞かれてたよな。せっかくだからソレは答えておくわ」
アキトの構えた鎌が、濡れた血で光っていた。
「皆殺し。お前らの命は、ぜーんぶ俺が頂いてやるからよ」
剣を抜き、勇猛果敢に向かってきたツァイセに、アキトはただ右手を突き出しただけだった。
「チートスペル“光の剣”」




