48.胎動とおっさん―6
始めは何かの見間違いかと思った。
こんな場所に、先客なんているはずがないと。
だが、確かに先頭を行く仲間の首は地面に転がっていて、その前には一人の“少年”が立ち塞がっている。
「スマートフォンだけもかっぱらってきた甲斐があったな。世界の動きが丸分かりだ」
「なんだ、お前は……っ!?」
少年の右半身には、酷い火傷の痕が残っていた。
その右手に持つ大鎌が、少年の持つ禍々しさを強く象徴しており、ツァイセは全身に鳥肌が立つのを感じた。
「どうも初めまして、イルスフィアの転覆を目指す組織の皆さん。……お待たせしました、勇者の登場です」
少年――アキトはおどけた調子で言うと、再び鎌を振るって目の前の男の胴体を真っ二つに斬り裂く。
「チートスペル“命を刈り取る鎌”」
目の前で同胞が殺され、イルスウォードの面々は色めき立った。
ここまで来て。
こんな少年に。
計画の邪魔をされるなんて。
そんな思いがあったのだろう。
だが――
「……っ!?」
握り締めていたはずの“竜の牙”にヒビが入ったのを見て、ツァイセはとっさに踵を返す。
そして、フードを被った少年――ミノンの手をしっかりと掴むと、その場から連れ出そうとした。
「何故だ……何なのだ、この悪い予感はッ!!」




