48.胎動とおっさん―3
「は、はは……。無様、だろ……将軍、ウルヴァーサがこんな姿になってよ……。……せめて、お前は……俺に勝ったこと……誇らしく、思えよ……」
それがウルヴァーサの最後の言葉となった。
完全に溶け出したウルヴァーサは、最終的には黒ずんだ液体となってその場に崩れ去る。
その中には、ミルププが使うようなミルワームが、体の中心から爆発したような形で残っていた。
「お、親父。ウルヴァーサのヤツは、いったい……」
何が起こったのか理解出来ず、キットはその場に固まっていた。
グルゥは、怒りの込められた拳を床に叩きつける。
「クソッ!! ……何がイルスウォードだ、テロリストが、大儀を掲げたつもりでいい気になって……!!」
「ミノンも、結局はここに居ない、ってことなんだろ」
ウルヴァーサの死に連動するように、残されたゴーレムもその動きを止める。
今頃ミノンは、他の血封門に連れて行かれているのだろう。
翡翠の血封門と違い、他の血封門は対応する鍵が二つあれば開いてしまう。
早くこの事実を伝えなければいけないと、グルゥはすぐに来た道を引き返そうとしたが、
「う……っ!?」
突然、眩暈がして、慌ててその場に膝をついた。
「あ、あれだけ動いた後です。少し休憩しないと、体が持たないと思います……だ」
「そんな時間は……私には無いのだ……!」
「そんなこと言って、キットさんはどうするつもりなんですか! ……だ」
ルッタに注意され、グルゥはう、と小さく呻いた。
確かに、ウルヴァーサに散々痛めつけられたキットも傷だらけの状態だ。
休まずに戻るのは、キットの体力を考えると難しいだろう。




