48.胎動とおっさん―1
「まずはアレを見るんだな」
グルゥによって体を吹き飛ばされ、敗北したはずの生首のウルヴァーサ。
しかし、何故かその態度は不遜なままで、『ベリアル』だから、と言ってしまえばそれまでなのだが、その様子にグルゥは若干の不安を覚えていた。
ウルヴァーサに示唆され、グルゥは未だに魔法陣に向かっているミノンに後ろから近付いていく。
まるで人間味のない行動に嫌な予感がしたが――それは的中することになる。
「……あれ? 意外と驚かないんだな」
「なんとなく、予想はしていたさ。……代わりに、お前のその残った生首も踏み潰したくなったがな」
フードをめくって露わになったミノンの顔。
が、それはミノンではなく、魔法の力によって動くゴーレムだったのだ。
「どういうことだ? ここにミノンを連れて来ずに、何がしたかった?」
「何がしたかったって……そんなの、言わなくたって分かるだろ?」
ミノンは翡翠の血封門ではなく他の場所に居る。
ということは――
「まさか……真の狙いは、他の血封門だとでも言うのか!?」
「ご明察。所詮、操り人形の俺は、お前を引き付ける為の囮でしかなかったってわけだ」
鈍器で後頭部を殴られたようなショックが、グルゥを襲っていた。
意味が分からない。
どうして自分に対し、ウルヴァーサを囮として使うような真似をしたのか。
ウルヴァーサはグルゥの驚く様子を見て、目を爛々と輝かせ喜んでいた。




