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尻餅をついた状態のマリモに、アキトは上から圧し掛かる。
「ちょっ、何――」
「好きだったんだよ……俺……マリモ先輩のこと……っ! なのに、どうしてアンタは……守ろうとすればするほど、俺を邪険にするような目で見るんだよっ!!」
アキトの言葉に、マリモは時が止まったかのような衝撃を受ける。
だがアキトは、構わずにマリモのシャツの胸元をはだけさせようとした。
「やめてっ!! 何をするつもりなのっ!?」
「そんなの……言わなくても分かるだろ? 証明が欲しいんだよ……マリモ先輩は、俺のことを見捨てないって、その証明が……っ!」
ぐしゃぐしゃの表情で、アキトは右手でマリモの胸を鷲掴みにした。
マリモはきゃあっ、と短く悲鳴をあげる。
「い、いやっ! こんなのおかしいよ、どうして急に、こんなこと――」
「おかしい? 急に? ……ふっざけんなよ、俺がどんな思いで、どれだけの覚悟を決めて……マリモ先輩だけは守るって、そう決めてたのに……!!」
アキトはそのままマリモの胸を揉みしだいた。
マリモは訳が分からないまま、アキトのされるがままになっていく。
自分の体を触られる不快感よりも、突然の告白と露わになったアキトの本心に、戸惑う気持ちの方が先行していた。
だが――アキトの手が下腹部に伸びた瞬間に、ハッと我に返る。
「ばかっ!!」
マリモの平手打ちが、火傷で醜くなったアキトの右頬をぶった。
アキトは脅えたような表情で、マリモに伸ばしていた手を引っ込める。
「何で、だよ……。マリモ先輩は、俺のことが嫌いなのかよっ!!」
「……昔のアキトのことは、嫌いじゃないよ。でも、今の利己的でっ、他人の命を何とも思わないようなっ、そんなアキトに犯されるなんてのは、死んでもヤダッ!! さっさと退いてよ、気持ち悪いッ!!」
拒絶。これ以上ないほどの絶対的な拒絶。
ナイフのように鋭く尖ったマリモの言葉は、ギリギリの均衡を保ち続けていたアキトの心を刺し殺すのには、十分過ぎるほどだった。
「…………ああ、そうかよ…………じゃあ、死ねよ…………っ!!」
「え――」
アキトの両手が、マリモの細首に伸びていく。




