47.続・プライドとおっさん―4
「当たったら一発でオジャン、って感じのパワーだな」
ウルヴァーサはあえてスリルを楽しむように、グルゥの攻撃をすんでのところで避ける。
その度にグルゥは反撃を受け、魔獣化した体から血が流れ出した。
右腕からの出血も止まらず、多くの血を流しすぎたグルゥは、徐々に目の前が暗くなるのを感じる。
このままでは、体力が尽きて自分が倒れる方が先だろうと、その予感もあったが有効打が無いのも現状だった。
「じゃあ、そろそろこっちも本気で行くぜェ!?」
一方、胴体に二つも穴が空いているというのに、ウルヴァーサのスタミナは切れる様子もない。
アンデッドであるウルヴァーサにとって、疲れや痛みは無縁の言葉なのだ。
「くッ!?」
正確に心臓を狙ってきたウルヴァーサの爪による突きを、グルゥは大きく仰け反って回避した。
が、そこで運悪く、自分が流した血を踏みつけてバランスを崩してしまう。
「ああっ!?」
片腕が無い状況では、満足にバランスを取ることも出来ない。
仰向けに倒れ、強かに後頭部を打ちつけるグルゥ。
ぐらぐらと世界が揺れたところに、ウルヴァーサはトドメの一撃を繰り出した。
「所詮、『サタン』の血統はな……『ベリアル』に、圧倒的に劣ってるんだよォォォォォォォォォォォォォォォッ!!」
最後の最後まで他人を見下して、本当にいけ好かないヤツだと、グルゥは思った。
その『憤怒』を抱えたまま、このまま負けるわけにはいかない、とも。
「私は……怒っているんだッ!!」
あまりやりたくない手段だったが――グルゥは千切れた右腕の先端を、思い切り氷の床に押し付けた。
冷たさを凌駕するほどの痛みで、そのまま意識が吹き飛びそうになる。
だが、沸騰するほどの温度に達していた血液によって、一瞬で氷が溶け水蒸気が発生する。




