47.続・プライドとおっさん―2
「学習しろよ、ガキ。こんな状態でピンピンしてるイケメンがいたら、普通もっと警戒すんだろ」
氷の床に這いつくばったキットを、ウルヴァーサは容赦なく蹴り飛ばす。
「がっ――」
壁にぶつかり逃げ場を失ったキットに、追い討ちの蹴りを一発。
キットが悶え苦しむ様子を楽しみながら、更にもう一発。
「や、め……」
口から血を流したキットは、腹部を押さえて体を丸め込み、なんとかウルヴァーサの攻撃を凌ごうとした。
だが、その姿が更にウルヴァーサの嗜虐心に火を付ける。
「あァ? 今さら止めてくれなんて、そんな都合の良い話あるわけねーだろッ!! それでも止めてもらいたいならさ、頼み方ってモンがあるんじゃねーか? 犬は犬らしくさァ、もっと愛玩動物っぽく哀れみを込めて言ってみろよッ!!」
何度もキットを蹴るウルヴァーサ。
何度も、何度も、何度も、何度も、何度も、何度も、何度も。
ボロ雑巾のように氷の上を転がったキットの体からは、いつの間にか力が抜け落ち、完全に気を失っていた。
「んだよ、もう死んじまったのか? もう少し楽しませてくれよ、それが愛玩動物の役目だろうがよ」
「……少なくとも、私は、過去に武勲を打ち立てたお前のことを……勇猛果敢な将軍なのだろうと思っていた。『ベリアル』の血統であれば、尚更だ」
右腕を庇ったまま、グルゥはよろよろと立ち上がる。
あァ? とウルヴァーサは明らかに苛立った様子でグルゥを睨み付けた。




