47.続・プライドとおっさん―1
信じられない、認めたくない光景だった。
ウルヴァーサは、噛み千切った腕を見せ付けるように顎をあげて高く掲げる。
その黒い剛毛に覆われた逞しい腕は、間違いなく、グルゥのもの――
「あああああああああああああああああああああああああああああああああっ!!」
「親父ッ!? そんな……嘘だろっ!?」
右腕の関節から先を失ったグルゥは、その場に膝をつき、必死に左手で傷口を押さえ込んだ。
どうにかして、出血を抑えなければならない。
何か良い方法はと考えたが、思考を巡らせるよりも先に痛みで考えが支配される。
「ぎゃははははははははッ!! とても固くて食えたモンじゃねーなッ!! 不味すぎるぜッ!!」
ウルヴァーサは手に取ったグルゥの右腕を、明後日の方向へ投げ捨てる。
その腹には大きな穴が空いたままだが、それでもウルヴァーサは、平然と仁王立ちをしていた。
「まあ……もうこんな、ブサイクな面を晒し続ける意味もねーか」
そう言って、自ら“竜化”を解くウルヴァーサ。
氷に映った自身の顔を見て、満足げにフフンと鼻を鳴らしてみせた。
「やっぱ俺って、どうしようもねーくらいのイケメンだな。お前もそう思うだろ?」
「ふ、ふざけんな……っ! 親父の腕を千切りやがって、コノヤロウっ!!」
一瞬で間合いを詰めたキットは、ウルヴァーサの胸板に電撃の拳を打ち込む。
すると、キットの拳はウルヴァーサの体を貫通し、二つの目の風穴が出来上がった。
「え――」
戸惑うキットに、上からウルヴァーサの拳が叩き込まれる。




