46.プライドとおっさん―6
瞬時にウルヴァーサの背後に回りこむキット。
だが、
「いくらすばしっこくたってさァ」
それを読んでいたかのように、ウルヴァーサは真後ろへ回し蹴りを繰り出した。
「単調な攻撃じゃ、意味ねぇんだよガキがッ!!」
電撃を纏ったキットに、鱗に覆われたウルヴァーサの脚が直撃する。
キットの体が、衝撃でバラバラに砕けたように見えたが――
「誰に向かって話してるんだよ」
それはキットの残像。
電撃の輪郭だけ残された、キットが仕掛けた罠だったのだ。
「な――」
蹴りを食らわせたつもりが逆に電撃を浴び、ウルヴァーサの体は大きく仰け反った。
更に空中から、電撃を溜め込んだキットの蹴りが、ウルヴァーサの背中に命中する。
「ぐあッ!?」
非力なキットであるが、電撃の力を使えば、大人一人くらい弾き飛ばすことが出来る。
そして、ウルヴァーサの吹き飛んだ先にいたのは――
「終わりだ、ウルヴァーサッ!!」
魔獣化した二の腕の筋肉が膨れ上がり、着ていた服が千切れ飛んだ。
渾身の力を込めたグルゥの拳が、ウルヴァーサの胴体を貫いていた。
がはっ、と夥しい量の血を吐き出すウルヴァーサ。
“竜化”が解け、その姿は元の人間の形へと戻っていく。
「おいおい、嘘だろ? この、将軍ウルヴァーサが……」
血塗れのウルヴァーサは倒れかけたが、すんでのところで、自身に突き刺さったグルゥの腕を支えにして踏みとどまった。




