46.プライドとおっさん―3
「ま、魔法ッ!?」
キットは慌てて小型の竜巻を避けたが、その勢いは衰えることなく、ぐるりと回って再びキットを狙おうとする。
「げっ――」
「おいおい、他所見をしてる場合なのかよ?」
竜巻に気を取られているキットの目の前に、宙を舞うウルヴァーサが一瞬で躍り出た。
その速度、キットと同等かそれ以上である。
「っやべ……!?」
振り下ろされる爪の一撃。
後ろには竜巻も迫り、万事休すの状態だった。
「させるかッ!!」
グルゥは横からウルヴァーサに飛び掛ったが、翼から巻き起こった風により、その巨体すら近付くことが敵わない。
一瞬の隙が出来たことで、キットは姿勢を低くして爪の一撃を避けたが、その動きを読んでいたウルヴァーサの膝蹴りが、既に目の前に置かれていた。
「あ――」
両腕で蹴りをガードしたキットだが、蹴りの目的が直接的なダメージを狙ったものでないことは分かっていた。
ポンとボールのように弾みのついた小さな体が、竜巻の中へと放り込まれていく。
「キットォォォォォォォォォォォ!!」
迷っている暇はない――グルゥは両腕を広げ、キットを体をしっかりと空中で捕まえた。
だがそれはつまり、自ら竜巻の中へ飛び込むことと同義である。
「ぐあああああああああああああああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ……」
グルゥの悲鳴は、暴風の中にかき消されていった。
竜巻の四方八方から血が飛び散り、中が大変な状況になっているのが見て取れた。




