45.氷の世界とおっさん―2
剥き出しの岩肌になっていた遺跡の壁が、徐々に整えられ、氷によって作られた壁へと変質していく。
キットはもちろんのこと、さすがのグルゥもその寒さには参ってしまい、ガチガチと歯の根を震わせていた。
「あら、寒いですか? そういう時は――」
パチンと指を鳴らすルッタ。
粉雪のような白い光が二人を包み込み、寒さが徐々に和らいでいく。
「む、今のは魔法か何かなのか?」
「はい。守り人は血封門の管理人ですから。これから先、気温はもっともっと寒くなりますし、当然、その対処法も知っています。もっとも、これくらいが私にとってはちょうどいいのですが……だ」
更に寒くなると聞いて、グルゥとキットは青ざめ、げんなりとした表情をする。
ただ彼女の言葉を証明するように、秘境にてルッタが着替え直した衣装は、ところどころにスリットが入った涼しげなものになっていた。
「恐るべし、『アスモデウス』……」
敵に回したら絶対に勝てないなと、グルゥはルッタの衣装を見ただけで、心の中で敗北宣言をした。
「さて、そろそろ血封門の入り口へと着きますよ。……と言っても、その入り口は魔法陣によって封印された氷の扉で塞がれていて、守り人以外に中に入れる者なんて居ないはずです……だ」
そして三人が辿り着いたのは、何重もの幾何学的な模様が描かれた、分厚い氷の扉が鎮座する血封門の入り口である。
ただしルッタの説明と違い、その魔法陣は左右でぱっくりと分かれていて、入り口は完全に開きっぱなしになっていたが。
「あ……ああ……あれぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!?」
あんぐりと口を開けたルッタは、信じられないと絶叫をあげた。




