45.氷の世界とおっさん―1
「ここが私の――守り人の住処。“秘境”です」
ルッタに案内されてやって来たのは、氷山を麓から回り込み、渓谷の付近に差し掛かった、その途中にある遺跡の入り口だった。
「……だ」
「あ、やっぱり付けるんだ、その語尾」
「すみません。どうしでも、標準的な言葉を使い続けていると気持ち悪くって……だ」
キットに突っ込まれながらも、相変わらずの言葉遣いをルッタは続けていた。
「ここを通れば、山道を登ったり、危険な一本橋を渡ったり、そういった過酷なルートを通らなくても血封門へ向かうことが出来ます……だ」
「へー! じゃあ、あっという間にウルヴァーサに追いつけるんじゃないか!?」
「いや、どうだろうな。今言った過酷なルートというのは、空を飛べれば問題なくやり過ごすことが出来るぞ?」
「あ……確かに。でも向こうはミノンを連れて進んでるはずだし……って、抱えて飛べば済む話だよね……」
『ベリアル』の圧倒的な優位性に気がついて、キットはぺたんと耳を畳んだ。
「まあそれでも、こちらのルートの方が有利なのには間違いないだろう。守り人まで付いていれば、道に迷うこともないだろうからな」
「お役に立てると良いのですが……だ」
控えめに言うルッタ。
三人は早速、秘境から血封門の入り口へと向かい歩を進めた。




