5.異世界勇者とおっさん―5
「どうした!? 何があった!? まだ生きているか!?」
グルゥは自身の服が血で汚れることも厭わず、男の上半身を抱きかかえる。
見たところ、まだ三十代前半くらいの男だろう。
これからの人生があるのに、なんて酷いことをする人間がいるのだと。
グルゥは内心、はらわたが煮えくり返るような思いでいた。
「いてぇ……うう、いてぇよぉ……!!」
「まだ、生きてはいるようだな。すぐに医者のところにまで連れて行く。お前、ここの町の人間か? 分かるなら、病院までの道のりを教えてくれ」
そう言って、グルゥは男を体をひょいと持ち上げようとしたが、
「ま、待ってくれ!! やめてくれよォ、それだけは!!」
突如として錯乱し、グルゥの助けを拒む男。
グルゥは唖然としながらも、仕方なく、男をその場に降ろした。
「ま、また表に出て行ったら……今度こそ殺されちまう!! 俺が、俺が悪かったんだ。アイツに手を出しさえしなければ……!!」
「順を追って、説明してくれないか。少し、整理がしたい。そして私は……君に、ここまで酷い行いをした人間を、事と場合によっては許さないかもしれない」
グルゥは男を落ち着かせるように、努めて落ち着いた声を発し、その背中を何度も何度もさすってやる。
「う、う……あんた、良い人なんだな。あんたみたいな人にもっと早く出会っていれば、俺もこんなことには……!」
それで、少しは落ち着いたのだろう。
ようやく錯乱状態から抜け出した男は、グルゥの腕の中で、これまでのいきさつを語り出した。




