44.続・魔女とおっさん―6
ただ、ミルププにとって嬉しい誤算だったのは、事態を重く見た各国の王達が、ここケントラムで緊急の会談を行うことにしたという一報を聞いたことである。
ヌエツトまで戻らなければいけないと考えていた道のりが、ケントラムに居るままで、デルガドスと会える見込みが出来た。
既にデルガドスはヌエツトを発っているという噂も耳に挟み、協力を要請するという目標達成までの時間は、大幅に短縮されたはずである。
一方で、会談には全ての血統の王が参加するわけではないという、不穏な話も聞いていたが。
(現段階で不参加を表明しているのは、『ベルゼブブ』『アスモデウス』『レヴィアタン』の三つの血統。『ベリアル』は負傷により王の参加はないけれども、使いの者を寄越す話にはなっているらしい。とすれば……今回のイルスウォードの件、裏で糸を引いているのは、真っ先に不参加を表明した三つの血統の内のどれか……?)
やはり怪しいのは『ベルゼブブ』かと思うと、ミルププは複雑な心境だった。
それは、自身の血統も『ベルゼブブ』であるという負い目であり、そして自分はそこにも属せないのだという、血統としての心細さもあった。
『サタン』と『ベルゼブブ』の間に生まれたミルププは、血統としては『ベルゼブブ』であるが、『サタン』の中で育てられてきた。
それもこれも、父と母が国に居つくことを許さなかったデルガドスのせいだと思うと、やはり素直にデルガドスに協力を要請したくない気持ちもある。
だが今は、個人の我が儘を貫き通している事態じゃない。
自分が動かなければ、大好きなグルゥにまで迷惑をかけてしまうのだ。
「……よっし」
そうと決まれば早いうちに慣れてもらわないといけないと、ミルププはベッドの中にイモムシを侵入させた。
サリエラが発狂して暴れ回ったのは言うまでもない。




