44.続・魔女とおっさん―4
「あ……なんですかその反応……? まさか、あなた達も血封門に侵入しようと……!? ……だ!?」
「違う。私とキットは、その『ベリアル』――ウルヴァーサを追いかけてここまで来たんだ。……あとその語尾、もはやわざとやってないか?」
「ほ……良かった、安心しました。侵入者であれば、あなた達とも敵対しなければいけませんから……だ」
さらりとツッコミを無視されたと、グルゥの心には妙なもやもやが残っていた。
「ウルヴァーサは、少年を連れていなかったか? その子が、元々は私達の仲間だったんだ」
「ああ……黒いフードを被っていて顔までははっきり見ていませんが、確かに人間の子供を連れていました。私も魔力には自信がある方なのですが、どうもその子相手には魔力が発揮できなくて…………だ」
フォルを吸収するミノンの力のせいだろう。
しかし守り人の魔力さえも無力化してしまうとは、本当に強い力を持っているのだと、グルゥは改めてミノンの不思議な性質に驚愕していた。
「なぁなぁ、親父。それじゃあさ、ルッタに案内してもらえば、ウルヴァーサに追いつくことが出来るんじゃねーか? だって、近道を知ってるんだろ?」
「こ、こらキット! いくら非常時とはいえ、彼女の本来の役割は血封門に人を立ち寄らせないことなんだ。そんな気軽にお願いしていいのか――」
「いいですよ……だ」
その返答は、驚くほどあっさりと返って来た。
「え……? いいのか?」
「はい。というか、むしろ私の方から頼もうかと思っていました……だ。このまま、『ベリアル』の青年を放っておけば……とても良くないことが起こると、そう直感していますから…………だ」
グルゥからしてみれば、ウルヴァーサに追いつくまたとないチャンスである。
一も二もなくお願いし、ひとまずは三人で夜を明かすことになった。




