44.続・魔女とおっさん―2
猿轡を外してやると、女性は訥々と語り始めた。
「うぅ……ご迷惑をかけてすみません、驚かせてすみません……だ」
「いや、君が謝ることじゃないよ。いったい何があったんだ? とても恐ろしい思いをしたのだろう」
服のない女性は体を毛布で包んで、泣きべそをかきながら話し続ける。
「わ、私はゲシュリカ・アイゼルファフテイン・リンゲルッタと申します」
はえー、とグルゥとキットは同時にポカンとした表情を浮かべる。
「あ、あ、覚えにくいですよね……すみません…………だ。頭文字を取って、ゲリとでもお呼びください」
「よりにもよって!? もっと良い抜き出し方があるだろう!?」
「ル、ルッタでいいよ。なんか一番、耳に残ったのそこだし」
「なんとでもお呼びください。私の名前がどう呼ばれるかなんて、何の価値もないことですから…………だ」
妙に卑屈なルッタの態度に、二人は困惑して顔を見合わせる。
そしてもう一つ、二人にはどうしても気になる点があったが。
「それで、なんで私があんなところに閉じ込められてたか、ですよね……だ。それは数日前のこと、突然、血封門への道に侵入してきた『ベリアル』の青年が現れて――」
「ちょ、ちょっと待ってくれ。先に言わないと、もう二度と突っ込めるチャンスがないような気がするから、先に聞いておく……だ」
つい感染ってしまったが、グルゥは気になっていたその事実に突っ込んだ。




