#####
外から聞こえるミクの泣き声が止むことはなく、マリモは悲痛な面持ちで俯いていた。
納屋の外に置かれた、ゲンロクの死体。
全身をずたずたに斬り裂かれた、見るも無残な姿だった。
「ひでーことするよな。魔人のヤツ」
怒りに燃える目で、ベッドに腰掛けたアキトが心境を吐露する。
「許せねぇ。許せねぇよマジで。俺達の大切な仲間を、あんな風にしやがって」
アキトはそう言ったが――内心、マリモはまだ判断がつかないでいた。
この目を覆いたくなるような凄惨な行いを、本当にグルゥがやったのだろうか。
今まで見てきたグルゥの行動を考えると、殺されることはあったとしても、刃物を使ってズタズタに、というのはあまり考えられないような気がした。
だが、今も部屋の隅でスマートフォンを弄り続けるユズは、完全に精神を崩壊させられてきている。
だから、分からない。
どちらがグルゥの本性なのか――今まで見せてこなかっただけで、その心の奥には残虐な思想を隠していたのか。
「ひとつ……聞いていいかな」
マリモは躊躇した挙句、一つの質問をアキトに投げ掛けることにした。
「アキトは、ゲンロクのことが心配で様子を見に出て行ったんだよね? ゲンロクは始めから、あんな沢山の傷を負っていたの? それでも、歩いてここまで来たのかな」
「あ? ……どういう意味だよ、マリモ先輩」
アキトは明らかにイラついた様子で、納屋の壁を殴りつける。
「俺達のリーダーであるゲンロク先輩が殺されたんだ。ユズも駄目にされた。今、考えるべきなのは……どうやって弔い合戦をするか、そのことだろ」
質問にははっきりと答えず、論点をずらすような言い方をするアキト。
そんなアキトに、マリモは心の中で疑念が膨らんでいくのを押さえることが出来ないのだった。




