43.魔女とおっさん―4
ミルププは死んだ……。
「いや、死んでないだろ親父。これ、カチンコチンに凍ってるだけだって」
「そうか? ……そうだとして、解凍したらちゃんと動くようになるのか?」
「さぁ……。とりあえず、やってみないと分かんないだろ」
キットに言われて、グルゥは手のひらにミルププを乗せたまま、暖炉の前で待機した。
そして、ゆっくり、ゆっくりとミルププを解かしていくグルゥだったが。
「スー……スー……」
すこやかな寝息を立てて眠る水色のイモムシ。
「ああダメだぞコレ! たぶん冬眠に入ってる!?」
「なんのために連れてきたんだよ……親父……」
通信役としてまったく役に立たなかったミルププに、グルゥは頭を抱えてため息をつく。
「ま、まあしょうがないだろう……。彼もミルププのファミリアとはいえ、そもそもは食用のミルワームにしか過ぎないんだ。生物としての本能には逆らえないのだろう」
「じゃあオレも、眠気っていう本能には逆らえないな……へへ、今のうち今のうち」
グルゥが暖炉の前に行っている隙に、ベッドを占領してしまったキット。
グルゥは再びため息をつくと、キットの上に覆いかぶさるようにベッドの上に寝転んだ。
「ぐええええええええ!? 重いっ、重いって親父っ!」
「じゃあ、さっさと場所を空けることだな。悪い子にはお仕置きだ」
ニッと笑ったグルゥを、キットは恨めしげな目で睨みつける。
結局ベッドは、二人で半分ずつ使用することになった。




