表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
424/984

43.魔女とおっさん―1

 吹き荒ぶ風の中を歩いていた。

 北に進むにつれて気温は徐々に下がっていき、寒さに弱いブラックキマイラの馬車では進めないような場所になっている。


 時折、風に紛れて氷の粒が降ることがあり、その度にグルゥはキットを腕の中に抱えながら進んでいた。

 腕の中は、寒さにガチガチと歯の根を鳴らして震えている。


「ご、ごめんよ親父……オレ、自分がこんなに寒さに弱いなんて知らなかった」


「仕方ないさ。初めて経験する気候なのだ。むしろ私も……暖を取れて良いかもしれん」


 そう言ったグルゥの口元は、合法的にモフれるこの状況にニヤニヤが止まらなくなっていた。


 『サタン』の血統であるグルゥは、他の種族に比べ体温が高いため、寒さに対してある程度の耐性はあるのだ。

 もちろんそれは、裏を返せばある一線を超えて体温を下げられると致命傷になり得るという、弱点でもある。


(『アスモデウス』の血統は、相手にしたくないものだな)


 ここが『アスモデウス』が統治する国、“キュリク”の外れだ。


(彼らの血は氷のように冷たく、寒さの中でしか生きられないと聞く。他の血統が生きるには難しいこの土地も、彼らにとっては絶好の住処となるわけだ)


 翡翠の“血封門イルゲート”は、一度キュリクの領内に入った後に、ぐるりと北から回り込むようにして氷山と渓谷を越えていく必要があった。

 イルスフィアに存在する三つの“血封門イルゲート”は、どれも易々とは踏み入れないような位置に存在しているのである。


「うぅぅ……あったかいお風呂に入りたいよぉぉ……親父ぃぃぃ……」


「もうすぐ山小屋があるはずだ。逆に、それが“血封門イルゲート”に向かうまでの最後の休憩地点になるかもしれん」


「ええ!? ……親父についてきたの、失敗だったかも」


 ケントラムに向かったサリエラとミルププのことを思うと、キットは泣きたくなるような思いだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ