42.決闘とおっさん―9
「やっぱ、グルゥさんはずげーッス」
月明かりの下、野原に大の字になったゲンロク。
ひとまずその命に差し障りがなかったことに安堵しつつ、グルゥはその横で腰を下ろし、ゲンロクの話に耳を傾けていた。
「俺の『鋼鉄の意志』がこんなに簡単に破られると思わなかったし……どうして、敵のことを気遣いながら戦うなんでことが出来るんスか? 俺じゃあまだ……その境地には至れないッス」
「買い被りすぎだ。単に、君のことは倒すべき敵ではなく、喧嘩の相手だと思っていただけだ。そんな相手に、酷いことを出来るわけがないだろう?」
「け、喧嘩ッスか……。こっちは命がけの決闘のつもりだったのに……」
ションボリとしたゲンロクを見て、グルゥは言い方を間違えたかと内心焦った。
だが、
「俺の完敗ッスね。……所詮、グルゥさんから見れば俺なんてまだまだガキだったってわけッス。……やっぱり、俺にはグルゥさんが、アキトの言うような悪人には思えないッス」
すっきりした表情でゲンロクは言った。
アキトが自分のことをどう言ったのかは分からないが、どうせロクでもないことなのだろうと、グルゥは推察する。
「……俺達のアジトの居場所を教えるッス。グルゥさんも、一緒に来てくれないッスか? 一度、アキトも交えて、ちゃんとした話がしたいと思ったッス」
「それは、こちらからもお願いしたいところだ。ただ、今は先にすべきことがあって――」
グルゥはゲンロクに、自分が置かれている状況についてかいつまんで話をした。
助けなければいけない仲間がいること。
止めなければいけない危険な勢力がいること。
「だから、君達のところへ行くのは、それが片付いてからにしたいんだ」




