5.異世界勇者とおっさん―3
「お前ら、それ以上騒ぐなら本当に置いてくぞ。いいか?」
「え、え!? なんでだよ親父っ! そんなこと言わないでくれよっ!」
「ケッ、やれるもんならやってみやがれ。その瞬間、お前はこの世界で迷子だぜ」
全く正反対のリアクションが返ってくるので、グルゥはさらに頭を抱える。
迷った末、グルゥは肩の上のミルププを、バックパックの中にしまっておくことにした。
「え、ちょ、おま――」
「使い魔は使い魔らしくしてろ」
ぎゅーっと固く紐を締めたバックパックの中で、わーわーと騒ぎ立てるミルププの声がしていたが、グルゥはそれを一切無視する。
一方でキットはと言うと、
「ごめんなさい……。もう騒がないから、許してくれよぉ」
涙目になり、ガチでへこんでいた。
そこまで気にするとは思っていなかったので、グルゥも慌ててキットを慰める。
「す、すまん。お前を置いていくわけないじゃないか。せっかく、こうして旅をする仲になったんだ」
「え!? 本気じゃなかったのか!? よかったぁ……親父のいじわる!」
そう言いながらも、キットは喜びを隠し切れず、グルゥに正面から抱きついていく。
「あらやだ……どういう関係かしらあの二人?」
「あまり似てないわね。変な案件じゃなければいいけれど」
それはそれで目立ってしまっていた。
グルゥは大慌てで、キットを抱きかかえて裏路地の方へ駆けていく。
「えへへ……親父、大好きっ」
グルゥは心配になってきていた。
こんなにべったりとくっついて甘えたがるキットに、この町で待機してもらうなんて、本当に出来るのだろうか、と。




