42.決闘とおっさん―3
だがどうして、共にゲームマスターを倒して欲しいとまで言ったゲンロクが、これほどまでに敵意を向けているのだろうか。
グルゥにはそれが理解出来なかった。
異世界勇者の中にもマトモな者がいるのだと、感心すらしていたのに。
「そんなに鋭い目で見ないでくれ。君が聞きたいことがあるのなら、私はちゃんと話すよ」
「そうスか……。それじゃあ、じっくりと聞かせてもらうッスよ!!」
そう言って、ゲンロクは突然グルゥに殴りかかって来た。
体重の乗った鋭い正拳突き。
グルゥはとっさに両腕を交差させ受け止めたが、直撃を食らった左腕がビリビリと痺れた。
「い、いきなり何をするんだっ!?」
慌てて距離を取ろうとするグルゥに、ゲンロクの容赦ない拳の雨が降り注いだ。
「叔父さんから教えてもらったッス。男と男の会話に言葉はいらない。拳で語り合えば十分だって……!!」
「極端すぎだ馬鹿者っ!! せめて何を聞きたいのかくらい言えっ!!」
必死になってゲンロクの拳を受け止めるグルゥ。
その一撃一撃が重く、まだ成長途中の青年の体のどこにこんな力があるのかと驚く。
だが、ゲンロクも同じような感想を持っていたらしい。
「さすがグルゥさんッスね。その鍛え上げられた筋肉の鎧、並みの拳じゃ貫けないみたいッス」
(生まれつきだって言ったら……ガッカリされるか?)
そんなことをグルゥが考えていた、次の瞬間だった。
「こっから本気で行かせてもらうスよ……!! 『鋼鉄の意志』ッ!!」
ゲンロクの拳が光を放ったかと思うと、その手は銀色にコーティングされていた。




